厚塗りっぽく見えるかもしれない塗りの話

なにやら久しぶりにゆっくりできた日だったので気長に待って下さい箱もといお題箱に頂いていた質問への回答記事のようなものを。
厚塗りのコツという事で、一口に厚塗りといってもイメージするものは人によって色々あるとは思うんですがここではカードゲームとかで見る感じの厚塗りっぽい塗りの方法と仮定して話をします。

 

ところで以前友人が厚塗りって線画描いちゃダメなんでしょ?というような方向から厚塗りが難しいとぼやいていたことがあったのですが、厚塗り系の絵で線がなかったりするのは塗ってく過程でラフとか線が潰れていってるだけで、その後に細い筆でエッジ部分を描き起こす作業があるので 線画を描かない=厚塗り ではないです。という話を先に少し。
勿論いきなり色から形を描き始める人もいらっしゃいますが、最終的に入れるべきところにスミは入れると思うんですよね。
『カラー&ライト』という本ではオクルージョンシャドウという説明があったように記憶しています。
何をもってして厚塗りとして定義するかという話をはじめるとキリがないのですが、デジタルでは結果としてそう見えていればいいので「こういうやり方をしないと厚塗りじゃない」っていう頭はとりあえず横に放り投げるが吉です。

 

で、厚塗りっぽく見せるにはどうしたらいいかという話なのですが。
とりあえず丸作って「ベースカラー」「ハイライト」「影」「反射光」をそれぞれレイヤーごとにわけて鉛筆で塗りました。(作業はSAI)
厚塗りっぽく見える絵って、乱暴に分解すると大体これらの要素の中での 色の変化が多い+(場合によっては)色同士の境界部分の色数が多い という状態だと思うんですよね。
あと過剰に彩度の高い色を乱用しない、とかでしょうか。

 

とりあえずそれぞれのレイヤーにガウスぼかしをかけて強引に境界部分の色を増やしました。
これだけでも雰囲気は違って見えると思うのですが、どうですかね。

 

更にエアブラシでそれぞれの色の中により暗い色や明るい色を足した状態。それっぽいといえばそれっぽいのでは、と。

 

あと彩度の高い色の乱用を控えた方がいいというのは、つまりこういう。
厚塗りに限らずですが彩度の高い色同士って実は明暗差があまりなかったりするので、立体感やメリハリに欠ける絵になりがちです。塗りのアドバイスを求められると私はよく影色の彩度は高すぎないようにした方がいいみたいな話をするのですが、彩度のギラついた影って立体表現としては弱かったりします。(あと色相の変化が少ないとか)
アナログだと混色すればするほど彩度が下がるのであまり気にならないのですが、CGは基本的には彩度が下がらない画材なので(SAIとかペインターはいい感じに彩度下がるけど)少し暗めの色合いで塗っておいて最後の仕上げで一気に彩度を上げる調整をすると綺麗にいくと思います。彩度を上げるのは得意で、その逆の処理は少しコツがいる画材なんですよね。CGって。

 

そんなこんなの話を踏まえて塗ってみる。
①ベースカラーにざっと影とかを塗る
②ブラシで色の中の幅を出す
③線画の上にレイヤーを作って1番暗い部分を描き足す(これは線が綺麗じゃなかったので更にもう1枚レイヤーを作ってハイライトのついでに輪郭線まわりを整えました)

 

各工程をフォルダで残したPSDを置いておくので、興味があればどうぞ →レイヤー未統合PSD
厚塗りぽく見える絵のそれなりに無難な作り方としてはこんな感じかなぁと思います。
もし色数や幅は十分なのにいまいちソレっぽく見えないという場合は、経験論ですが恐らく③の工程が足りないのではと予想してみます。ケースバイケースではあるのですが。

 

あとCGにおける厚塗り表現の考え方についてはこちらの講座が分かりやすく大変おすすめ

厚塗りについての考察漫画 | pukko.y

 

ついでにオマケ。10月に描いた絵の塗り工程を撮っていたもの。あまり厚塗りって感じじゃないですけど。

時間制限を設けて描いていたのでこれは基本背景とキャラと線画のレイヤー3枚で作業していますが、自分が普段やってるのはどの絵も大体はこんな感じです。ブラシはペインターのチョークの中にあるコンセプトアートブラシと鉛筆、ソフトオイルパステルの3種類で、ざらざらしてるのは1番上にオーバーレイで紙の質感テクスチャを置いてます。(この記事の1番下にレイヤー構成をのせてます)