風景画に関してはいきなりドーン!ごちゃごちゃっ!と描くのではなく、まずは簡単なスケッチとかで慣れていくといいよとは言うのですが、その段階でまず何をどうしていいかわからないという場合の取っ掛かりの話をしてみる記事です。
ちなみにパースの話はしませんので、そういった情報をお求めの場合はもっと詳しいサイトに行くとか本を買うとかをおすすめします。

 

 

風景背景に興味はあるのだけど何をどうしていいかわからない・・・というのは、結構聞く話で。
聞かれる範囲で多いのは

1.パースがわからない
2.どこからどうやって描いたらいいかわからない
3.面倒くさい

大体こんな感じ。
1は今回ぶっ飛ばして2の話をしようというのが今回の記事です。
ちなみに3に関してはある程度は回数をこなして慣れると解消されたりします(わからない事がそのまま面倒くさいに繋がってるパターンって結構あるので)

 

これは実際に学生さんに送った解説用画像なんですけど、風景が描けないとかどうしたらいいかわからないという人は②を飛ばして③の状態でいきなり描こうとしがちで。
③の状態は描きこみの最後の方でよくて、まず描き始める際には②の状態を目指します。
窓とか手すりの棒とかそういうのは本当に最後でよくて、最初は形状の単純化・主要なシルエットをおさえていきます。

 

例えばこの写真だと

 

スケッチの際に必要な形状情報はこんな感じです。
植物は葉っぱを1枚1枚描くのではなく外側の大きな輪郭をおさえます。
ちなみに取っているシルエットの選別基準については、基本的にはその絵で描きたい所・目立つものです

 

ざざっとシルエットに色をつけてみる。これだけで風景に見えてきませんか。
大体のパースの雰囲気と色とシルエットが取れていればあとは意外と見る人の脳内で補完してくれたりします。
普段何気なく見てる風景でもよほど注意して見てない限りは葉っぱ1枚1枚の情報なんていうものは拾ってないですからね。実際には見えているんだけど拾ってない情報といいますか。
大事なのはどこの情報をどう拾って見せたいかなので、葉っぱ1枚1枚を描く事はさして重要ではないんですね(勿論絵の情報量を高めるためには大事な情報ですが、まず取っ掛かりの話として今回特に扱いませんということで)
ちなみにワンドロとかスピードペイント系の短時間で描いてるのに情報量が高くてスゲー!ってなる絵はこういった主要なシルエットがきちん作られて整理されている絵だと思います。
逆にいうとシルエットがきちんと取れてない・整理されてない絵はどれだけ塗りの情報量をあげていっても微妙に見えたりする。

 

さて、シルエットは出したけどどこからどう描けばいいのか。
全部を全部ぎちっと描く必要は実はなくて、細かい描きこみはあくまで見せたい所に絞ります

 

これだけでなんとなく空間が出たような気分になる。
見せたい所に色数や細かいシルエットをしっかり作って、あとは抜いていきます。

 


主役の空間をしっかり作っておけばあとは添えるだけ。
最初はまず目立つシルエット作って描くとこ描かないとこの差を意識するといいんじゃないかなと。
全体を均等にぎちっと描くと視線がスッと流れて行かないんですよね。空間も死にがちだし。
風景を描こう!から続かない人は、このメインの空間がどこなのか設定されてないまま全体を均等な力配分で描いてしまってなんか折角描いたのにイマイチだな・・・ってなって風景画の面白さを感じられないままま投げ出すパターンをよく見ます。かつての自分もそうでした。
ゲームの背景画の仕事とかでない限りは描きたいところだけ描けばいいと思うよ。本当に。
キャラクターのいるイラストの背景ならキャラのいる周辺の空間だけしっかり描くとか。キャラのいない画面四隅とかをねちねち描いても特に狙いがない場合はあんまり効果的ではないと思うんですよね。

 

つまりはこういうことなんですが伝わるかな・・・
見せたい所だけしっかり密度を作ったら後はほどほどで。

 

以上を踏まえて実際に1枚描いてみます。
この写真をもとに描いていきます。ちなみに某聖地の隣。

 

写真はごっちゃりしてるけど見せたい所を決めて要素を拾います。
今回は画面右のお店を見せつつ画面中央の道の奥へ視線を誘導したいので拾うのは主に道の構造と画面右側のお店周りです。
画面左はそんなに重要ではないのでざっくり。自転車とかはなかったことにします。

 

今回レイヤー分けはしないので最初に画面を一気に埋めます。下塗り。
ここで意識するのはあくまで全体の明暗と色の雰囲気。ディティール等は後で整えるのでとにかく最初は全体の雰囲気を掴むところまで持っていきます。
慣れない時ほどまず植木鉢をちまちま描いて次に道路を描いて・・・という事はなるべく避けるようにします。
いや、別にしてもいいんだけど慣れてないとなんか植木鉢だけ浮いてる、とか完成時の距離感がちぐはぐになる・・・とか事故が起きやすいので。
早い段階で全体の雰囲気を作っておくけば、これを基準にどこをどれくらい描けばいいのかという判断もしやすくなり描きこみもベースは下地の雰囲気を拾って細部を描くだけでいいとか、後の事を考えるとメリットは多いです。

 

全体を作ったあとどこから手をつけたらいいのかわかんない時はその絵で目立たせたい所を優先的にやっていくといいと思います。
というわけでここでは右側の階段の手すりまわりを先に整えています。
目立つ主要な空間を整えるだけでお手軽に出てくる空間の雰囲気。

 

お店周りの植物は上にレイヤー作って作りこんだ方が綺麗なんだけど今回はそんなに細かく作るつもりがないので1枚レイヤーでごりごりやっています。
奥の葉っぱは1つの塊としてとらえて光の当たる部分に焦点をあてて描き、お店の中とか重要度の低い部分は詳細に描かずに影で処理します。
描きこみのコツとしては特に狙いがあるとき以外はぼけ足の強いブラシは避ける事。
ぼやぼやぬるぬるさせまくると視認性が下がってしまう可能性があるので。

 

あとは添える程度に画面左に手を入れて道のディティールを少し足して終わりです。
めっちゃ描きこんでる!とまではいかなくても、これくらいの手の入れ方でも結構それっぽく見えてくるので風景描くのは楽しいよ。